「おしどり夫婦」の由来は、中国の故事「鴛鴦(えんおう)の契り」にあります。「鴛」はオスのオシドリ、「鴦」はメスのオシドリを指します。
「鴛鴦の契り」の内容は以下の通りです。
中国戦国時代、宋の康王(こうおう)の臣下であった韓憑(かんぴょう)が妻を王に奪われ、憤激のあまり、葬ってくれと遺書を残して自殺した。妻もまた葬ってくれと遺書を残して自殺した。王はわざと離れ離れに向かい合わせて墓を作ったところ、一晩で梓(あずさ)の木が両方の墓から生え、十日もすると枝が連なり根がからみあい、雌雄のオシドリが棲(す)みついて悲しい声で鳴いていたという。
出典『捜神記(そうじんき)』
では、実際のおしどりの夫婦仲の良さはどうでしょうか?
実際のおしどりの夫婦も、片時も離れずにいつも一緒に泳いでおり、その姿は一見、非常に仲睦まじいものに見えます。オスとメスが寄り添って泳ぐ様子は、まさに理想の夫婦像のようです。しかし、これは実際にはオスが他のオスにメスを取られないように監視するためといわれています。オスはメスに対して独占欲が強く、そのため常に一緒に行動しているのです。
ところが、おしどりの夫婦仲が良い期間は非常に短いのです。メスが卵を産むと、オスは育児に参加せずに去っていきます。そして新たなパートナーを探しに行ってしまうのです。おしどりは毎年パートナーを変える習性があり、その浮気性は他の鳥類とは大きく異なります。ほとんどの鳥類が一生パートナーを変えない中で、おしどりだけは毎年新しいパートナーを見つけるというのは、興味深い事実です。
このように、「おしどり夫婦」という言葉が持つ意味と、実際のおしどりの生態は大きく異なります。しかし、故事や伝説を通じて生まれた言葉が人々の心に残り、理想の夫婦像を象徴するものとして使われ続けているのは、とても興味深いことです。
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