正露丸は、クレオソートを主成分とした胃腸薬(下痢止め)で、1902年(明治35年)に「クレオソート丸」として創薬されました。
当時の陸軍はクレオソートの殺菌力を信じ、チフスのみならず脚気にも効く万能薬と考え、日露戦争(1904年〜1905年)に出兵する兵士の常備薬としました。(もちろん脚気にもチフスにも効きませんが、歯痛には効くようです。)
当初はそのまま「クレオソート丸」と称していましたが、日露戦争ということで、ロシア(露西亜)をやっつけるという意味の「征露」丸の方がふさわしいということで、たちまち「征露丸」という名称が流布しました。
戦争終結後は、国際関係上「征露」は好ましくないとされ、行人偏をとって「正露」に改訂されました。
現在、「正露丸」は一般名称としての使用が認められているため、各社、ラッパ、瓢箪、打出小槌といったマークを使用して「正露丸」という名称で胃腸薬を製造・販売しています。
なお、奈良県の日本医薬品製造株式会社だけは、今も「征露丸」という商品名で製造販売しています。
正露丸はその創薬以来、日本の歴史の中で様々な変遷を経てきました。現在でも多くの製薬会社によって製造され続け、その効果と歴史は日本の薬文化の一部となっています。
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